研究概要 |
本研究は,Key Predistribution System(以下,KPSと略す)の実現およびKPSの情報システムへの応用に関して,理論面・実際面から基礎的な検討を行うことを目的としており,本研究の昭和62年度の主な研究成果は以下のようにまとめられる. ここに,KPSは,一度も会ったことのない人(または装置)とでも,自分とその相手しか作れない秘密の暗号鍵を,通信を行わずに手軽に共有する方法であり,KPSの具体的実現法としては線形スキームと呼ばれる方法が有力である. 1.線形スキームの理論的検討:線形スキームにおいて,センタが生成する秘密の大規模行列G,及び,センタとエンティティが用いるID変換アルゴリズムRの具体的実現法を検討した. 特にRにはFEALという対称暗号系を構成要素とする高速で安全性の高い実現法があることを示した. また,従来,有限体上で定義されていた線形スキームを加群上に拡張し,より有効な線形スキームを構成することに成功した. 2.線形スキームの装置的検討:大量の演算を必要とするセンタアルゴリズムを効率よく実現するために,並列処理用マイクロプロセッサであるトランスピュータ十数台と追記型大容量光ディスク装置を核とする,センタアルゴリズム用装置を設計した. 現在,これを製作中である. また,各エンティティ用の秘密アルゴリズムのICカードによる実現法を数種考案し,対応するICカードのアーキテクチャの検討を行った. 3.KPSの応用:KPSを用いて電子メールを暗号化して送る方法を考案した. またKPSとICカード等を用いれば電子的な署名実現できることも明らかにした. 加えて,これらの応用を実験するための環境として,パーソナルコンピュータが参加するローカルネットワークを構成し,次年度の研究準備を行った.
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