研究概要 |
1.胸部X線像:本年度は成分図識別法の向上,および,従来のソフトウェアの性能評価に重点をおいた. まず,血管影抽出については,新しいフィルタの特性を場所によって変える位置可変処理の導入によってかなり改善された. つぎに,異常陰影については,じん肺症の肺野に特有の粒状影の抽出手順を開発した. 従来のじん肺計算機診断はテクスチュア特徴のみを利用していたのに対して,この結果を用いて粒状影密度を直接に計測できる可能性が生まれ,新しい特徴量としての利用が期待される. 一方,画質の異なる新しい画像としてエネルギー差分画像に注目し,骨構造画像からの肋骨像の識別,軟部組織像からの血管影および限局性異常陰影抽出手順を開発した. エネルギー差分像の本格的なパターン処理は初めてであり,貴重な知見を得た. 従来のソフトウェアシステムAISCRーV3の能力評価については,確定診断つきの胸部X線像40例について,4種類の画像強調処理を施したものを作成し,専門医,医学生,および,上記システムの診断結果を克明に比較して現在の計算機診断の能力と限界を明らかにした. この種の組織的実験も初めてのものであり,今後のシステム開発に有用な基礎データが蓄積された. 2.胃X線像:胃X線二重造影像に対して,胃壁ひだ集中パターン,および,バリウム貯留域を検出する手順を開発し,十数例の試料画像に対して良好な結果を得た. これは胃X線二重造影像の計算機診断における最初の実験的成果である. 3.データベース:上記実験に用いる胸部X線像の画像データベースに対して,画像キーを入力とするパターン検索などの一手法を示し,実験結果と合わせて知的画像データベースの一つの可能性を提示した.
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