研究概要 |
弾性表面波を利用したSAWデバイスの広帯域化,小型化,低損失化を達成するためには, 電気機械結合係数K^2の大きな基板が必要になる. 本研究者は, 擬似弾性表面波を伝搬減衰のないラブ波型表面波にすることによる, KD12D2が30%以上になる表面波基板を見出した. 本研究では, まず金,銀などのストリップ電極を周期的に設けるだけで高結合なラブ波型表面波を簡単に実現することに着目し, その為の諸条件を明らかにする. さらに, これをSAWデバイスに応用し, その飛躍的な広帯域化, 小型化, 低損失化の達成を目指し, 設計・作製方法を確立することを目的とする. 本年度は, 以下に述べるような研究成果を得た. 1 金ストリップを用いる場合, (1)ストリップの膜厚Hを波長λの1%程度以上にすれば, 擬似弾性表面波はラブ波化し, 伝搬減衰は小さくなる. (2)ストリップ1本当りの反射率は, H/λに比例し, H/λ=2%では, 0.3程度と極めて大きな値になる. この値は, 従来のレーリー波を利用した場合に比べて10倍以上である. (3)基板の切断角θが0°ではH/λ=3%程度になるとレーリー波との結合によるスプリアスが生ずるが, θ=15°では, H/λ=3.7%程度までスプリアスは生じない. 2.銀ストリップの場合は, 擬似弾性表面波をラブ波化する効果と1本当りの反射率が金ストリップの場合の約0.7倍と小さくなる. 3.金,銀ストリップを用いて共振子を構成する場合, 直列容量を付加する方法などの周波数上昇型のエネルギー閉じ込め型表面波共振子の構成方法を適用できる. 4.共振子の容量比は, 3程度と従来の表面波共振子の1/20以下の値が達成でき, 極めて広帯域である. 5.IDT共振子では, 電極指を菱形状に重み付けることにより, 縦モードと横モードに基づくスプリアス応答を同時に抑圧できる.
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