研究概要 |
脊随・筋骨格系の運動制御機構を(1)筋骨格系の力学的構造解析と(2)脊随レベルのパラメータ調節機構に分け,本年度は,筋骨格系の力学的構造と機能に焦点を絞り, 以下の結果を得た. 1)筋・関節・手先の運動学的関係がヤコビ行列を用いて記述することが可能であり,筋骨格系の力学構造とインピーダンス調節の関係を明確にした. さらに,生体の優れた手先操作性が筋や関節の冗長性を利用したインピーダンス調節に基づくものであることを理論的に明らかにした. また,関節自由度の冗長性を利用することにより,手先インピーダンスを一定に保ちながら, 関節・筋のインピーダスンを選択する手法を提案した. 2)対象物インピーダンス特性のうち,スティフネスを取り上げ,アームの関節空間でのコンプライアンスを同定することにより,間接的に,対象物のスティフネスを同定する方法を提案した. 3)生体の筋骨格系のインピーダンスを直接測定することは, 位置と力の厳密な測定を必要とし非常に因難である. 本年度は, 最大随意収縮時の手先の振動現象に着目し,力学モデルを利用して,間接的に筋骨格系の運動インピーダンスを推定することを試みた. その結果,手先振動現象の主たる要因は, 筋紡錘を含む反射ループのむだ時間と筋の可変粘弾性にあることが示された.
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