昭和62年度、昭和63年度の研究調査により、大型低速船型が荒天時に於いて中高速船型に比較して船速低下の度合が激しく、運動は緩和されるが繰舵性能が低下し、安全運航上問題があることを示すと共に、このような極低速域に於ける船速低下を精度よく推定する方法を求め、その一部を学会論文集に発表した。 平成元年度はこれらを基礎として、風浪中の船速低下、定常横力、回頭モ-メント、横流れ角、舵力等を総合して荒天時の繰船可能限界を求め、航海実績統計によって検証した。これら基礎シミュレ-ションと北太平洋航路の風と波の統計頻度分布を用いて繰船不能に陥る確率を求めた。一方常用出力が十分高い主機関を装備しても、故障で常用出力が得られなければ役に立たないことから、推進機関系の信頼性(アベラビリティ)を勘案する必要がある。本研究ではこの2つの確率を組合せる、すなわち、主機出力不足によって繰船不能に陥る確率が、推進機関系の故障確率を上回らない点が必要最低主機常用出力と基準を設定した。 この基準によると、第1次オイルショック以後年々に搭載主機出力が低下している大型低速船の排水量当り主機常用出力は今や0.06ps/tになっていて、必要最低限出力に極めて近く、更に低燃費を求めて主機関出力を低下することは安全運航上不安があることを明らかにした。
|