研究概要 |
1)都市震災の連関および波及構造に関する基本的なメンタルモデルづくりを目的に, 広く有識者を対象にして, 都市の各種供給システムが地震被害を受けたとき, 都市活動のいろいろな分野で起こりそうな波及効果をリストアップするための記述式アンケートを実施した. 約70人に依頼したところ, 44人からの回答を得た. 2)上記アンケートの結果をKJ法で整理し, 都市震災に際して考えうる事象のグルーピングを行い, メンタルモデルの作成を試みた. グルーピングは1つの事象が大きすぎたり小さすぎたりならないように特に注意した. 3)上記2)の結果に基づき, 事象間の関連をマトリックスで与えることにより, 事象間の構造をISM法により同定することを試みた. また, 連関の度合の評価が「あいまい性(Fuzziness)」に極めて強く支配されることに注目し, FSM法による構造解析を実施した. 4)上記3)の解析は試行錯誤的なプロセスをたどらざるをえなかった. 波及効果の内容は, 量的・質的・時間経過的にさまざまであり, 2つの事象間の連関の度合をあまり厳密にとらえるより, 強い・弱い,大きい・小さい程度の区別の方がむしろ適切であることが分かった. 5)FSM法による多数回の試算を重ねているうちに, 通常のFSM法の結果では, 2つの事象間の直接のつながりが欠落してしまう場合があり, これは現状のFSM法のアルゴリズムの一部が必ずしも合理的でないことを示すものと考えられた. 6)FSM法の欠点を改良するため, 直達事象をより合理的に組み込むことのできる新しいアルゴリズムを開発し, これを用いて構造解析を実施したところ, 都市震災の波及構造を従来よりずって分かりやすく表示できる可能性があることが確認できた.
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