本年度の研究計画に対応させた研究実績の概要は以下のようである。 減圧練りしたAEモルタル中のエントレインドエアが集合・粗大化することを示唆する試験結果の確認に関しては、(1)この現象が練り上がったモルタルの取扱中で生じること、(2)その程度は、水セメント比が大きい場合および減圧土が大きい場合に大きくなる傾向にあること、(3)砂セメント比を過度に大きくすると、この影響が顕著になること、等が明らかになった。この現象は、減圧下で気泡を覆っていたAE剤分子の一部が大気圧への解放後にモルタル中に遊離し、これが新たな気泡を連行する影響と思われ、従来からの一般のAE剤を用いる限り、不可避な現象と考えられる。しかし、本年度末に、この種の問題を解決できると期待できる新種のAE剤を米国から入手出来たので、上記の問題の対策に関する研究を更に進めていく予定である。 コンクリートの試験では、空気量に関してはモルタルの試験と同様な結果となった。しかし、(1)空気量およびスランプの経時変化(低下)は通常の場合より非常に小さいこと、(2)減圧練りまぜによる空気量の現象がスランプの低下に及ぼす影響の程度は、通常の半分位であること、等の好ましい結果も得られた。 気泡組織に関しては、取扱中に混入したと思われる数%(個数の割合)の気泡の影響を除いて解析すると全般的に予期した気泡分布に近いものであることが確かめられた。このため、空気量を同じにした場合には、減圧練りコンクリートの気泡組織は著しく改善され、耐凍害性も優れていることが認められた。しかし、AE剤量を一定とした場合には、300mmHgで練りまぜたコンクリートが良好な耐凍害性を有していたのに対し、160mmHgまで減圧したものでは満足すべき耐凍害性は得られなかった。
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