最終年度は本観測及びデ-タの解析、そして総合考察を行った。本観測は予定通り8月上旬に天塩川において実施された。しかし、不幸にして台風くずれの低気圧が道北地方をかすめ、海面の上昇や強風のため正常な河口二層流は観測できなかった。従って、理想的な二層流のもとでのレイノルズ応力の観測は不可能であった。その後、十勝川に場所を移して観測を試みたが、ここでは降雨のため増水し、結果的には単一流体(河川水のみの状態)下でのレイノルズ応力の計測をするにとどまった。 今年度の観測は上記の通り失敗に終ったが、再観測は次年度にやり直すこととし、ミクロスケ-ルの問題については1〜2年後に続編の報告書に報告する計画である。ただ、マイクロスケ-ルの問題については、かなり重要な結果を得たので報告しておく。 不運にもミクロスケ-ルの観測はできなかったものの、天塩川における逆流現象の観測結果や猿払川の観測を通して得た緩混合形式の実態はきわめて価値があり、従来の観測において不明となっていた部分を十分補ってくれる。その上、成層状態の空間的・時間的変動を規定する一対のパラメ-タKとFaを与えてくれる。ここに無次元量Kは河口での平均水深と潮汐の変動振幅の比であり、Faは密度フル-ド数である。K-Fa平面に従来の観測デ-タと今回の観測デ-タをプロットすると、表層流れの順・逆流条件、3つの混合形式の分類、塩水侵入限界の条件を明白に示し得る。最終年度は、上記の他、界面現象を解明する手がかりとなる界面波の弱非線形段階までの成長を、非線形安定性解析えを通して明らかにした。解析結果は、界面直上及び直下の流れの不安定が界面変形を引きおこし、それが界面波として認識されることを示しており、流線構造は現実のものと、ほぼ、一致する。
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