研究概要 |
河口に発達した砂州は,中小洪水時の河川流の疎通能力を低下させ,時として洪水を引き起こす原因となる.通常,河口の発達・減衰を支配する主要因としては,河川流による流出土砂と海波による岸沖漂砂および沿岸漂砂の3つが挙げられる. 沿岸漂砂は汀線に対し波が斜めに入射する際に発生し,その場所的変化率が負になる所に砂州が成長するが,ここでは,沿岸漂砂の影響は除外し,岸沖漂砂のみを対象とした基礎的研究を行った. すなわち, 河川流により流下し,河口部に堆積した土砂は,どの様な場合に侵食され,またどの様な場合にさらに堆積が増大するのかを,一様勾配移動床斜面に波を当てて実験的に考察した.その結果,砕波帯内から河口部に至る地形が,侵食型になるか堆積型になるかという区分は,従来,砂村の提示した沖波波形勾配と底勾配および相対粒径を用いた区分に良く一致し,さらに,侵食型,堆積型および中間型のいずるの海岸の場合も,無次元漂砂量φとシールズ数4との関係は,従来渡辺らが提示した式に近い φ=8(4ー0.06)4^<1/2>のような関係式が得られた. 次に,このような岸沖漂砂の移動機構を考察するための基礎的研究として,電磁流速計により,1/30および1/10勾配の固定床斜面上の多数の点で水粒子速度を測定した.得られた流速値は,水面変動からリニアフィルター法で計算した値と比較した結果,海底勾配の比較的緩やかな場合に生じる崩れ波および巻き波では,砕波点のみならず砕波後も,水面変動からの計算値が妥当な値を与えることが判明した.このことは,岸沖漂砂の移動を予測する上で,水面変動が非常に重要な要素であり,かつまた,砕波後の水粒子速度をある程度予測することができることを確認したものとして重要である.反面,急勾配斜面上で発生する砕け寄せ波では,戻り流れと反射波の影響により,実測値と計算値は一致しないことが分った.
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