研究概要 |
昭和62年度は, 主に粘土と鋼材との間の摩擦現象の解明を行った. 摩擦抵抗に影響を及ぼす要因としては, 鋼材の表面粗さ, 粘土の圧密圧力および載荷速度を取り上げた. また, 摩擦試験の結果は, 粘土のせん断試験の結果と比較検討した. 摩擦試験の概要は次の通りである. 摩擦試験装置には, 一面せん断型の試験機を使用し, 圧密定体積試験を行った. 粘土はスラリー状態から圧密し, 応力解放などの乱れを与えずに載荷した. 粘土の圧密圧力は3種類, 鋼材の表面粗さは2種類であり, 載荷は地震時を想定した繰返し載荷の他に一方向載荷も行った. 載荷速度は繰返し載荷では9.6〜96mm/min, 一方向載荷では0.5mm/minである. 鋼材面上では間隙水圧が測定できる仕組みになっている. 次に実験結果について述べる. まず, 全応力表示および有効応力表示の粘土ー鋼材間の摩擦角は, 鋼材の表面粗さの影響を受ける. これは鋼材面の粗さによる摩擦のメカニズムの違いによるもので, それぞれの粗さの場合の摩擦のメカニズムを摩擦係数ー変位曲線の形や試験後の鋼材面上での粘土の付き具合いから考察した. その結果, 鋼材面が滑らかな場合は, 粘土のせん断変形は小さく鋼材面で滑りを生じ, 粗い場合は, 粘土のせん断変形だけで破壊に至ることがわかった. 鋼材面が粗い場合や圧密圧力が大きい場合は, 摩擦抵抗や鋼材面上で発生する過剰間隙水圧のピーク値が大きい. 一方向と繰り返し載荷の結果を比較することにより, 摩擦抵抗は鋼材面が粗いと粘土のせん断と同じ程度載荷速度の影響を受けるが, 滑らかだとそれほど影響を受けないことがわかった. 繰返しによる摩擦抵抗の低下は, 鋼材面が滑らかだと数回の繰返し回数で残留値に至るのに対して, 粗いと粘土のせん断と同様に除々に低下し続ける. なお, 上記の摩擦試験の妥当性を得るために粘土試料の層厚を半分にした試験と垂直圧力を一定にした試験も行っている.
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