本研究は、今日大きな課題となっている教育方法等の多様化に対応した特色ある学校施設の実現を図る上で不可欠と考えられる基本計画・基本設計プロセスについて、その現状を把握し、問題点を整理した上で、その在り方を具体的に提案しようとするものである。大きな構成としては、先ず行政システム、基本計画・基本設計の組織体制について、完成施設の計画内容、評価、学校運営の状況等と対照しながら、分析・考察を行なっている。これについては昭和59年度からの多目的スペースに対する補助制度、61年度からの基本設計費への補助制度を初年度に導入した全国の教育委員会に対するアンケー調査と、現地ヒヤリング調査を行なった。また、設計期間、各段階での検討内容、それが形に収束されるプロセスについて、筆者らが本研究期間中に直接関わる機会をもった学校計画について、同時的なケーススタディを行った。特にその中では、教師の参加の意義、ランナーの役割について考察を行なった。主な内容を以下に示す。 1)従来の標準的なスタイル前提とした設計期間、費用、設計者の選定、定着を阻んでおり、多目的スペース、基本設計費への補助制度はこれを変化させる一定の影響を及ぼしつつある。 2)基本計画・設計にかけた時間の長さ、教師の参加程度により、施設および設計プロセスの有効性に対する評価が分かれる。 3)施設や教育方法等に関する理解、情報提供が検討の幅を広げる上で効果的かつ必要。 4)情報提供、用語の翻訳、教育方法・建築技術両面にわたる総合的判断を示し、学校、設計者、行政の間をコーディネートするプランナーの働きを明らかにした。 5)基本計画・設計を進める組織体制、設計プロセスは計画条件により異なり、それに柔軟に対応できることが、学校建築の多様性を保証する上で重要。
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