1.共同建替え計画中の老朽公営住宅団地を対象として、次のような事例分析を行った。(1)入居後、数十年を経た公営住宅団地においては、住宅そのもののと老朽化と同時に、居住者の高齢化・低所得化が進行している。これに伴ってコミュニティ活動の維持が困難になっていることが明らかになった。(2)公営住宅の共同建替えは、老朽住宅・住環境ストックの改善向上に多大な効果を発揮するが、家賃の上昇によって住み続けることが困難になる層が存在すること、収入超過者の排除は、コミュニティの年齢構成をいっそうアンバランスにしていること、単身化・孤立化に対してケアサービスが大きなニーズとして要求されていることがわかった。 2.京都市営醍醐南団地での調査を通じて、入居後十数年の経過のなかでの居住歴・居住者構成の推移と、単身老人問題の発生するモデルを作成し、これによって家族類型ごとに高齢単身化のパターンが異なることを解明した。 すなわち、単身老人であること自体が問題ではなく、単身化のプロセスのあり方が単身老人の孤立化を規定していることが実証できた。 3.さらに、京都市営住宅応募カードを用いて、応募高齢者世帯の分布と募集された団地の所在地との相関と選択理由について分析した。その結果、応募世帯では、いわゆる多家族同居世帯向け住宅よりも小人数(欠損)世帯の需要が多いことが明らかになった。そして、高齢者の居住地選択特性の分析から、既住地域社会から絶縁されない供給立地条件の重要性が導かれた。 4.集団住宅の共同建替え、スラム・クリアランス(都市再開発)の発達過程に関する分献研究を行った。スラムクリアランスには、オスマン方式から英国の自治体住宅政策まで、その事業手法が異なるが、日本の場合は大正期に英国の住宅政策を取り入れている。ただし、不良住宅改良と公営住宅は切り離されていたことが明らかになった。
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