本研究は、様々な実験や実態調査に基づき、病院病棟部における病床周辺環境の適正な規模・構成を求めることを目的とするものである。(A)入院患者の生活の場としての病床周辺環境、(B)看護婦、医師の看護・治療の場としての病床周辺領域の2つの側面からの分析を行なった。研究方法としては、(a)実際の病棟・病室における観察、実測調査、(b)実際の入院患者に対するアンケート・ヒアリング調査、(c)病院管理者への郵送アンケート調査、(d)模擬病室におけるシミュレーション心理実験(e)実際病室における看護動作シミュレーション実験 にと多角的な手法で試み、総合的に課題を検討した。 最終的な内容は、以下のような章だてによってとりまとられているが、最後にこれ等を総合し、病室における病床周辺環境の在り方について、規模、寸法、建築的構成、家具構成などの点から建築計画学の観点に基づいた提言をとりまとめている。 1.シミュレーション心理実験による病室の適正ベット間隔に関する研究 2.病室のベットまわりスペースの実態と患者の評価・意識 3.入院幹事やの所持品と収納に関する分析 4.病室における患者の生活領域の形成に関する調査・分析 5.病棟における患者の生活領域の形成に関する調査・分析 6.看護動作シミュレーション実験による病床周辺の必要作業領域の検討 最終的な結論として、(1)患者の意識・心理の側面からは、ベット間隔150cm程度が最適であること(2)看護婦の動作領域として必要かつ妥当な寸法として、キュービクルカーテン内の必要間隔寸法120cmが求められること、(3)これ等にたいして我国の病院の病室における病床周辺の環境は、いまだ貧困な状況にあり、実際の入院患者の不満には強いものがあること などを示した。今後の継続研究が必要とされる。
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