本研究は、コバルト・リッチ・クラスト鉱床の開発システムについて、昭和62年度および63年度の科学研究費を得て研究したものであり、昭和62年度において、文献によりコバルトクラスト鉱床の賦存状況や物理的性質およびこれまで提案されてきた開発システム等について研究し、この鉱床の開発に最適と思われるシステム、つまり、海面上の船より中間にポンプモジュールと下端にバッフアをもつ揚鉱管を懸垂し、そのバッフアと海底の自走式採鉱ロボットをフレキシブルパイプで連絡する流体ドレッジ方式を提案した。 さらに、このシステムの動的挙動の解折に必要なポンプモジュールおよびバッフアに作用する流体力の評価方法を開発し、それによって種々の形状と寸法を持つポンプモジュールおよびバッフアの非定常流体力を求めた。 つぎに、昭和63年度において、以上の結果を利用することにより、本研究で提案した開発システムの設計上および安全作業上もっとも重要であると考えられる、船の運動に起因する揚鉱管の縦振動ならびにそれによって生ずる動的応力について理論的に解折した。その結果、このシステムでは、縦振動の1次の共振現象を起こす可能性が大きく、揚鉱管に設置されたポンプモジュールおよびバッフアの配列、質量、形状を変えることだけではこの現象を回避することが難しいことがわかった。しかしながら、共振現象を起こしたときの揚鉱管、ポンプモジュールおよびバッフアの振幅の抑制ならびに揚鉱管の動的応力の軽減には、以上の配列、質量、形状を変化させることの効果があり、これらのうち、抗力係数の大きなポンプモジュールおよびバッフアを使用することがもっとも効果的であることがわかった。
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