2年間にわたる本研究の目的は、急冷凝固における冷却速度と凝固組織のより正確な関係を測定できる方法を開発し、種々の合金に対するデータを得ると共に、急冷凝固組織の形成機構に考察を加えることである。 まず、最初に、自由落下中の直径50ー100μmの合金粒子をレーザー照射により溶解し、強制対流冷却で急冷凝固させる装置を試作した。しかし、移動する微小粒子を室温で溶解するには、雰囲気ガスに奪われる熱量が大きく、5KWのレーザーでも困難なことが分った。そこで、電気ヒーターで雰囲気加熱する方式の装置を開発した。さらに、静置させた粒子をレーザー加熱、溶融し、急冷凝固させて、光センサーで冷却曲線を測定できる装置を開発した。また、粒子表面での異質核生成を防ぐため、ガラス中に保持した試料のみを加熱、溶解、急冷凝固させることを試みた。しかし試料の凝固収縮により、試料とガラスの間にギャップが生じ、急冷が困難であった。 上記の装置によりAl合金や非晶質合金に対する冷却速度(10^4ー10^5K/S)と凝固組織の関係を求めることができた。また、これらの実験データを基に急冷凝固組織の形成機構について考察を加えた。その結果、核生成の容易さのみならず、凝固速度(固相の成長速度)も過冷却、従って、凝固組織に大きく影響することが分った。
|