研究概要 |
一般に高分子を融液から 結晶化すると球晶となる.しかし強誘電性高分子であるフツ化ビニリデンと三フッ化エチレンの共重合体P(VDFーTrFE)は常圧でもよく発達した伸長鎖ラメラ結晶と,バルク状単結晶が成長することを見出した. 本研究ではこれらの結晶をより大きく成長させること,結晶成長の機構を明らかにすること,高度に結晶化した膜の物性を明らかにし,電気機械変換素子としての応用をはかることである. 本年度はまず高圧・高温下での結晶成長を行なった. このため高圧・高温装置(10Kbar,350℃)を導入した. 種々のVDF組成をもつP(VDFーTrFE)の高圧下におけるDTAを測定し,強誘電・常誘電相転移温度Tcと融点の圧力依在性(相図)を, 定した. 圧力依存性は相転移における吸熱, 体積変化から予測されるものとよく一致した. 高圧下で成長したラメラ結晶の厚さ(0.15ー0.2μm)は常圧結晶化ラメラよりも1.5ー2倍大きくなった. 高圧下で結晶表面エネルギが増大するとともに,分子鎖の流動性が増大した結果である. 一方,高圧下でもバルク状単結晶はよく成長したが,その大きさは常圧下成長の結晶と比較して顕著な増大は見られていない. 常圧下で得られた結晶の最大径は10μmであった. さらに溶液法,帯域溶融法によって結晶成長を試みている. 一方ラメラ結晶の電子線回折による研究を行なった結果,ラメラ結晶は欠陥の少ない結晶であり,単結晶ドメインがμm^2の範囲で拡っていることが分った. このような結晶が常圧下でも融液から,または融点以下での熱処理で成長することが見出されたのはこれが最初である. 高圧で結晶化したP(VDFーTrFE)は欠陥が小く,融点が高く,また十分結晶化を進めることによって,高温まで強誘電性が保たれ,圧電変換効率が大きいことが明かとなった. これは超音波送受波素子などに有用である. NMR,力学測定で分子運動を研究した.
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