研究概要 |
造成畑地の安定, 保全について2つの面から検討を行った. 先ず第1は造成地土壌の理化学性について, その造成地の代表的土壌であるマサ土の特性の比較検討を行って明らかにした. 第2は造成時における施工状況を把握するために, 現地造成現場で調査を行った. 先ず造成地土壌である阿武隈山系のマサ土の特性は, 粒度, 水分特性, 風化度, 示差熱分析, 電子顕微鏡写真等の試験結果から, 次のようなことがわかった. 1.粘土分に乏しい. 2.比重が非常に大きい. 3.有色鉱物を多量に含む. 4一次鉱物の長石, 雲母の風化が進んでいる.5.低p^F領域での保水性が極めて大きい. そして, これらの特性が土壌侵食等に大きく影響していることが考えられる.つまり, 吸水膨潤性に富む有色鉱物が, 降雨等によって吸水膨張し, 土壌面を極めて軟弱状態にして, 土粒子間の結合が弱まってリルやガリを生じさせる原因になると推定された. すなわち, 阿武隈山系のマサ土は, 一般に受食性の高い土壌であると判断された. 次に, 阿武隈山系の盛土法面の崩壊機構については,盛土部と地山の境界に形成される滞水層の存在が乾燥密度, 貫入試験等の結果から確認された. この境界層が水道となって法面に浸出して, 盛土法面崩壊の主因となることが明らかになった. これらの調査結果から判断して, マサ土地帯の地山に残っている地下の水道組織というものは, 農地開発等によって容易に消失しないと考えられる. 従って, 今後のマサ土地帯の農地開発は, マサ土が水に対して極めて弱い性質を持つことを考え, 水に対する処理が第一である点を考慮して, 造成前の現況を詳細に検討し, 盛土法面の選定場所や谷地田の湧水処理等を十分検討して施行しなければならないといえよう. 今後はさらに対象土壌・地域を広めて研究を進める必要がある.
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