農村集落排水のような小規模汚水処理施設に適した脱リン技術として、鉄接触材を使用した脱リン法の開発と実用化、並びにその運転管理方法を明らかにすることを目的として、処理方法の異なる3ケ所の実施設において実証試験を行った。 1.接触曝気法……岡山県山手村平山地区処理施設 本地区は処理対象人口234人、計画汚水量63.2m^3/日で2系列から成る。そのうちの第一系列の接触曝気槽に鋳鉄製濾材1160個を充てんしたところ、生物膜の肥厚化とともに硫酸還元菌によるバクテリア腐食が起こり、良好なリン除去が行われた。次に第二系列の嫌気槽に鋳鉄製濾材2400個を浸漬したところ、当初は良好であったものの次第に除去率の低下がみられ、濾材の目詰りと過度の生物膜の肥厚化を防止するための逆洗の必要性が指摘された。 2.回転円板法……鳥取県東郷町埴見地区処理施設 本地区は処理対象人口220人、計画汚水量59.4m^3/日で2系列から成る。そのうちの1系列の円板60枚を鉄製円板に交換して比較実験を行ったところ、従来のプラスチック円板の流出水リン濃度は平均4.1mg/lであるのに対し、鉄円板の場合は2.2mg/lで、平均53%の除去率が得られ、1年半を経過してもその効果は明瞭に認められた。 3.回分式間欠曝気法……滋賀県秦荘町常安寺地区処理施設 処理対象人口210人、計画汚水量56.7m^3/日で、実容績36m^3の曝気槽2連から成る。そのうちの1槽に鉄筋558本を浸漬して比較実験を行ったところ、鉄筋浸漬によるリン除去効果は明瞭で、浸漬後1年5ケ月を経過しても60〜80%程度のリン除去率が得られた。また、鉄筋浸漬はBOD、SSの除去並びに窒素除去のための運転管理指標に何ら悪影響を与えていないことが確かめられた。
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