研究概要 |
研究の基本的かつ特徴的である方針は次の二つの条項に大別される. (1)大強度相対論的電子ビーム(IREB)からのコヒーレントな放射としての電子サイクロトロン・メーザーと自由電子レーザーの競合過程を実験的に十分な精度で明らかにするために(2)長いパルス幅, 速い繰返しで, しかもラマン的相互作用の特質を保持している電子ビームと, これと相互作用をする外界としての外部条件を実現すること. これ等の特質のために, 本研究の遂行は二年間にわたる継続研究として認められている. 研究計画において述べたように, 最初の年度である62年は, 専ら研究の前提であるハードウエアとしての実験設備, 観測機器を整備, 開発することに力点が置かれた. 速い繰返しの電子銃の設計, 製作は成功裡に終了し, 試験運転を実施しつつある. なお電子ビームの粒子エネルギーを制御可能なパラメーターとすることが極めて望ましいことが明らかとなり, このために, 新たに誘導型線形加速システムによる追加速の装置を設計し, 製作, 組み立てをほぼ完了した. 他方において, 前年度までの予備実験を補完するいくつかの実験を行ない, 実験結果を検討して得られた知見として(I)外部から入射した放射の, 電子サイクロトロン・メーザー・モードにおける, 大強度相対論的電子ビームによる共鳴吸収の存在の確認, (II)おなじく電子サイクロトロン・後進波モードの発振による大強度可変波長メーザーの実現, を得た. 結果はそれぞれ現在公刊の過程にある. 上記の二点の内, 特に(I)は逆自由電子レーザー機構による電子加速の存在の可能性を示すのとして, また(II)はIREBによる電子サイクロトロン・メーザーの機構に関して重要な情報を与えるものとして注目される.
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