研究概要 |
本年度の実施計画に応じて, 差動排気系の設計を行い, 製作設置後圧力試験, 及び長パルスビーム引出し特性を実験的に調べた. 差動排気系設計にあたっては, 系が複雑な形状であるため, 通常の集中定数系としてのコンダクタンスを用いては, 比較的単純な形状の排気特性を予測することも困難であることが判明したので, 新たに, 分布定数系を加味したモデルを作り, それによって実際の排気系を設計した. 製作した装置を用いて圧力変化の実験を行ったところ, 圧力変動は, 計算結果とほぼ一致したが, 一致しない場合もあった. とくに, 実験前に高真空に引いておいた場合の実験では, 容器壁表面自身の吸着に起因すると思われる排気により, 理論計算値とは異なる結果となった. 次に15KeVのヘリウムビームを用いて1秒長パルスの引出しを行い, マイクロファラディカップ, カロリメータを用いて, ビーム空間強度分布, 中性化効率, ビーム直接発電機格納容器圧力等を調べた. 圧力は設計通り, 1秒程度で定常となり1.3x10^<-4>Torrと差動排気系を設計する前に比べて一桁以上小さくなった. またビーム空間強度分布は, 時間とともに変化するが, 概ねガウス分布で良好に近似でき, 100msec後は, 1/e幅は4cm程度と以前に比べ約1.0cm程度大きくなった. また中性化効率は, 約50%と前回と大差のないことが判明した. これは, 差動排気系設置により, イオン源とビーム直接発電機入口のカロリメータ間が約70cmから105cmと長くなったため, 圧力の低下にも関わらず, ガス線密度が殆ど変化しなかったためと考えられる. 以上差動排気系により, 所定の圧力が達成できたが, 今後差動排気部のコングクタンスを変化させる, バッフル構造を変化させ, より低圧で, かつ中性化効率を低める方式を調べるとともに, 長パルスビーム直接発電を行う予定である.
|