研究概要 |
正イオン源をベースとする中性粒子入射装置(NBI)は現在世界の4大トカマクや、小型の閉じ込実験装置などで多く使用されているが、高エネルギー化とともに中性化効率が大きく減少するため、非中性化イオンを高効率で回収することが装置効率向上、またビームダンプ表面でのDーD反応による中性子発生抑制の点でも不可欠である。更に将来実用化の予想される負イオン源をもちいたNBIシステムでは、1MeVというような高エネルギーのD^-,D^+等の高効率回収が要請されており、高効率ビーム直接発電機が必要となる。京大で研究開発したビーム直接発電機は、発電機外部から高正電位コレクターへ流入する電子、および発電機内部で原子過程により生ずる低エネルギーイオンが発電機外枠に衝突の際叩き出す2次電子を抑制するための2次電子抑制格子を有している点に特徴があり、実際この格子に-90Vを印加し、100msecヘリウムビームによるエネルギー回収実験を行ったところ、エネルギー回収効率を60%から85%に大きく改善できることを実証した。さらに通常運転領域の約500倍高い6.5×10^<-2>Paにおいても正味電力が回収出来るなど、本抑制格子設置の著しい効果が実験で確かめられた。これを受けて、本研究では将来のNBIを想定し、その定常化に起因するビーム直接発電の工学的問題を検討するため、数秒の長パルスビームによる高効率エネルギー回収実験を行った。そのため差動排気系を増設し、15.8keV、100mA、2sec.ヘリウムビームによるビーム直接発電実験を行った結果、設計製作した差動排気系は良好に動作し、また長パルスビームによるビーム直接発電の特性はパルス時間よりもむしろ運転雰囲気圧力に強く依存し、1×10^<-2>Pa以下では2次電子抑制を行なうことにより、80%以上の高いエネルギー回収効率が再現性よく実証できた。またビーム回収時の熱的問題は認められなかった。
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