研究概要 |
超高真空電子顕微鏡を使って膜成長過程の"その場観察"を行ない, 成長初期の構造や成長様式の研究を行なうため, 蒸着装置と画像解析装置を整備した. 蒸着装置は, 予備排気室を持ち, そこをターボ分子ポンプで排気した後に超高真空電子顕微鏡内に導入するように工夫した. そのまめ, 金属や半導体などの蒸着物を能率よく交換でき, 種々の物質の成長過程を系統的に観察できる. 一方, 画像解析装置では, 膜成長過程を連続記録したビデオテープから, 一コマ一コマを取り出して, 構造変化の詳細を観察できる. このシステムについては, J.Phys.に投稿する予定である. 現在までに, 蒸着装置を用いて, 予備的ではあるが, 1)金や, 鉛のグラファイト下地上での核成長過程の観察, 2)シリコン表面の金の吸着過程の観察をおこなった. 1)の観察では, 金の微粒子が正二十面体の多重双晶粒子となり, 方位を変えながら次第に成長する様や, 液滴様の合体をする様子が, 原子レベルではじめて捉えられた. また粒子が大きく成長すると, (111)面や(110)面で囲まれた形状となる場合, (111)面では1原子層ごとの成長が起こり, (110)面では2原子層高さのステップ構造が見られた. (110)面の構造は, 2x1再配列構造で, 成長過程と表面の再配列構造が密接な関係を持つことが示された. また, 2)の観察では, 金の吸着とともにシリコン(111)表面の7x7再配列構造が5x2構造に変化していき, この吸着が, とくにステップの高い側に起こることや, 反位相境界に優先的に起こることが判った.
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