前年度に引続き、本研究の最終目標である布を通しての熱・水分・空気の同時移動を記述できる式を誘導し、その妥当性の検証およびこれらの応用研究に重点をおいて研究を進めた。本年度の成果は以下の通りである。 1.布の通気性を的確に記述できる繊維集合構造パラメータを、理論と実験結果を対比して提案し、繊維の形態や糸の構造、布の構造を与えられた条件として布の通気性の設計ルートを明確にした。 2.着衣系を想定し、設定した環境条件下での着衣構成、すなわち重ね着条件下の通気抵抗を単体の布の特性から説明し得る複合則を見出した。 3.以上の布の通気挙動の解析結果をもとに、伝意の風圧下における熱水分の同時移動を記述する式を導き、皮膚モデルから布を通しての熱・水分移動特性の計算を行い、実例結果と比較して式の妥当性を検証し、実際の着衣系における熱移動ならびに水分移動特性の予測精度を検討して式の実用性を確かめた。 4.重ね着など異なる着衣構成を想定し、身体と衣服との間隙ならびに衣服と衣服との間隙、すなわち積層布の間隙の熱・水分移動機構におよぼす布の通気性の影響について、最も単純な二層構造布を用いて実験的に捉え、3.で導いた式を適用して、式の精度を確かめた。 5.以上を総合して、布の通気性が被覆する布、すなわち人体を被覆する衣服の熱遮断効果ならびに放熱効果におよぼす影響を定量的に明らかにし、布の快適性能設計のための基礎的資料を整えた。
|