研究概要 |
今年度は, 軽水冷却子原子炉の反応度事故時に過渡沸騰により発生した蒸気ボイドが凝縮, 消滅していく過程を炉外で再現するために, 小型沸騰水ループを使用して, 様々な液サフクール度, 流速条件で高周波加熱器を熱源とする加熱実験を実施した. 蒸気ボイドの挙動を詳細に観察するために, 新たにパイレックスガラス製の透明可視化試験部を設計製作し, 現有の沸騰水ループに設置した. この透明可視部での蒸気泡凝縮挙動をビデオカメラで撮影し, 結果はビデオ信号としてイメージプロセッサーに取れ込んだ後に, コンピュータにより二値化, 孤立点除去等の画像処理を施して, 気液界面位置を正確に検出した. ビデオカメラによる撮影は一方向からのみの平面的な観察であるため, 本実験では蒸気泡の水平断面形状が円である円筒モデルを気泡立体形状として仮定し, このモデルに従って気泡体積・断面平均ボイド率等を算出した. 以上の様な今年度開発した画像処理計測システムにより±10%の範囲内の精度で試験部断面平均ボイド率分布が測定できることが検証実験の結果から明らかとなり, このシステムは二相流流動パラメータ計測法として充分有効な手法であることが解った. また, 今年度実施した実験結果から以下のようなことが明らかになった. 1.試験部入口サブクール度による断面平均ボイド率の変化は, 従来のサブクール沸騰域二相流理論に基づく理論値と熱的平衡を仮定した場合の計算値の中間に分布する. 2.特に凝縮の顕著な実験条件では, 数度程度の入口サブクール度の変化により試験部流動様相は大きく変化する. 3.同一実験条件において, 徐々に凝縮していく気泡と, 界面の乱れに伴い急激に潰れる気泡とが, 共存している場合があり, 試験部を流れる液相温度に脈動が存在することが推測される. 今後は二相流流動パラメータのさらに詳細な測定, 及び非凝縮性ガスとしてArガスを試験部に混入した場合の影響の調査を行う予定である.
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