研究概要 |
高転換型軽水炉は, 転換比が0.9〜1.0となることが予想され, ウラン資源の有効利用と高燃焼度の達成が期待され, 次世代炉として期待されている. しかしながら, この原子炉の課題の一つは, 軽水/燃料の体積比が現軽水炉の1/3〜1/4に低下する稠密炉心における定常及び事故時に十分な流動と除熱が得られるかにある. 本研究は, この基礎研究として, ワイヤースペーサを有し流動特性を稠密炉心と合わせた内管加熱の狭い環状流路における定常条件下の沸騰伝熱現象,限界熱流束及び二相流特性等を調べた. 実験装置は, ポンプ, 予熱器, テスト部, 気水分離器, 凝縮器及び冷却器からなり, 作動流体としてフロン113を用いている. 次の成果を得た. 1)沸騰二相流の流動様式は, 気泡流からフロス流への遷移が管径の大きな流路に比べて低クオリティで生じる. 2)核沸騰熱伝達について, スペーサがない場合従来の式にほぼ一致しているが, ワイヤスペーサを有しそのピッチが減少するにつれて, 高熱流束領域で熱伝達率が悪くなる. 3)限界熱流束については, 従来の関係式に比べて, 実験結果は約2割程度低い値を示し, 新しい実験式を得た. ワイヤスペーサをつけた場合の限界熱流束は, あるピッチで極大値をもち最適なピッチがあることが明らかとなった. 4)沸騰二相流の圧損は, 長尺狭管内の沸騰二相流は熱入力により圧力損失が大きな影響を受けるとともに, サブクール沸騰領域のボイド率の効果も圧損に大きく影響する. ここでは, サブクール領域のボイドモデルをつくると共に, ワイヤースペーサを有する沸騰流路の摩擦損失倍率について新しい実験式を求め, これらを用いた沸騰二相流の全圧力損失は, 種々の条件の実験結果とよく一致する事を明らかにした.
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