昭和62年度に実験ループの製作が遅れたために、昭和63年度に調整運転がずれ込み、実験予定は大幅に遅れている。しかしながら、当初予定していた試験部の製作は終了した。 フロン-113を作動流体とする実験に先立ち実施する大気圧水の実験のうち、円管試験部ま実験は一応終了した。現在、稠密格子炉心流路を模擬した異形流路の限界熱流束実験に取りかかっている。 これと並行して、円管内大気圧水の実験結果の解析を行った。従来の高圧水、高クオリティ域の限界熱流束のモデルは、沸騰環状二相流の液膜の蒸発と液膜からの液滴エントレインメント及び液膜への液滴デポジションによる液膜消滅モデルが一般的であり、実験結果とも良く一致することが報告されている。しかしながら、このモデルによれば、大気圧水の場合、流路発熱長対直径比(L/D)が小さいとき、あるいは貭量速度の大きいときには実験結果をうまく再現できないことが分かった。貭量速度が大きいときには液膜ドライアウトよりも、むしろDNB型の限界熱流束への移行が考えられる。流速が小さくかつL/Dが小さいときには、液膜内の沸騰の影響が考えられ、その効果を考慮した新しいモデルにより解析して結果、実験結果と良く一致する結果が得られた。これは、大気圧近傍では高圧水に比べて水と蒸気の密度比が大きく、そのために液膜内沸騰の影響が大きいことを示している。 今後は、円管以外の試験部を用いた実験によりデータを蓄積し、また作動流体にフロン-113を用いた実験を行い、これと水を作動流体とする実験結果とを比較することにより、限界熱流束に対する流路形状及び圧力の効果を系統的に究明していく予定である。
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