近年、マイクロコンピュータによる応答関数のフーリエ変換が短時間で簡単に行えるようになったことで時間領域でのスペクトル測定の発展は著しい。本研究では200mV立ち上がり時間35psのステップパルスを50Ωの同軸ケーブルで結ばれたサンプルに当て、その反射波を時間領域で観測しその反射波をフーリエ変換するととによの10^6〜10┣D110の広い周波数範囲の複素誘電率を得る事ができる。我々は生きた生物を含む生体物質に対しこの新しい測定法を用い20GHzにピークをもつバルキな水とは別に100MHz付近に緩和のピークを発見した。この100MHz付近に観測される緩和は結合水によるものと考えられる。 SSC buffer中のDNAにおいてもこの100MHzの緩和は観測された。この緩和は、転移温度で秩序ー無秩序的な転移を起こすことがはっきりと観測され、結合水はDNAの表面上で二次元ネットワーク状の構造をとると考えられる。一方、転移温度以上では、結合水はこの様な秩序構造をとりえず結合水の構造はDNAの構造に非常に敏感である事が判る。子牛胸線DNAは水ーエタノール混合液中でB【.SY.dblarw.】A型転移を起こす。これに伴い結合水も転移を起こすその結果、B型構造を維持するには少なくとも一残基当り20個の水分子が必要であり、さらに水分子を取り除けばB→A型転移を起こすことが示唆される。合成DNAであるpoly(dGーdC)・poly(dGーdC)は水ーエタノール混合液中でB【.SY.dblarw.】Z【SY.dblarw.】A型転移を起こす。もしBDNAの燐酸基から選択的に結合水を取り除けばB→Z型転移を起こす。Z型ではB型に比べ結合水量は半分であり、A型では約15個の水分子が一残基当り結合している。 最初トロポコラーゲンで観測された結合水の構造はストリング状のものである。今後球状タンパク質や生体膜などの生体物質での結合水の役割や機能について研究が待たれる。
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