研究概要 |
1.レーザーフォトリシスESR装置の時間分解向上。 高い時間分解能(5ナノ秒)をもつデジタイザー(ソニーテクトロニクスRTDー710、垂直分解能10ビット)を現有のESRスペクトロメータ(バリアンEー109E)の過渡信号検出系に組み入れることにより、時間分解能の向上をはかることができた。また、高速前置増幅器の導入により、SN比の改善を行った。このようにして改良した装置を用いて以下の研究を行った。 2.オルソキノン類の光化学反応機構と励起三重項(T_1)状態の研究。 光誘起電子移動反応および水素引抜きに関与するT_1状態は、溶媒極性の影響を著しく受けることが、CIDEPおよびT_1状態時間分解ESRスペクトルから明らかにした。本研究により初めて、1.2ーナフトキノンの無リン光性T_1状態を観測し、アルコール中、ππ性をもつのに、リン光を発しないことを指適した。(Chem.Lett.発表、J.phys.Chem.印刷中)。 3.シッフ塩基の光誘起プロトン移動から生ずる無リン光性三重項中間体。 フォトクロミズムを示すこの分子は、その分子内反応過程で、ケトアミン体のT_1状態が生成すると予想されていたが、無リン光性のために、不明であった。時間分解ESR法を用いて、初めて、短寿命の、トアミン体のT_1状態スペクトルを観測するのに成功した。求められた零磁場分裂定数は小さく、ビラジカル性格を反映している決論した。(JCS.Chem,Commun.発表)。 4.0ーメチルアセトフェノの光誘起分子内水素引抜き反応の研究。 標記反応過程で生成する無リン光性エノールを時間分解ESR法により観測し、零磁場分裂定数が、その高い反応性を反映していることを明らかにした。関連化合物の反応に関与するT_1状態を低温下で測定し、また、溶液中における電子移動反応に由来するCIDEPスペクトルから、詳しい研究を行った。(J.Phys.Chem.日化誌、投稿中)。
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