研究概要 |
液体ヘリウム温度から室温の間で温度可変のマイクロ波(中心周波数 9GHz)共鳴空胴を以下の方針に基づいて設計,製作した. (1)断熱効率を高め空胴近傍の熱容量を低く抑えるために,透過型でなく反射型の空胴とする.(2)単結晶試料が常に最大電場の位置にあるように,マイクロ液の偏向電場に対して方位を回転できるようにする.(3)断熱および温度制禦を容易にするために導波管,共鳴空胴,空胴格納器内を排気できる.(4)結晶方位の回転を遠隔操作で行い回転角度を直読できる.などの方針である.製作業者の選定と設計上の細部のつめに時日を要し,現在のところ共鳴空胴と立体回路の接続組立て,既存のマイクロ波発振器,本予算で購入した周波数計数器および結晶検知器との接続と性能検査を行っている段階である. 一方,比較の対照となる直流伝導度の測定のために,10nVの分解能をもつデジタル電圧計を購入し,既存の直流定電圧定電流電源,金属製クライオスタットと組合せて, 直流電気伝導度の測定を行っている.試料としては,金属的伝導性を与える可能性の高いビス(エチレンジチオロ)テトウチアフルバレン(ET)のカチオンラジカル塩を中心に合成しa.(ET)_2AuI_2塩としては,従来知られていたβー,δー変態の他にγーおよび新たに我々が見出した多形変態の伝導度を測定し,特に後者では金属ー絶縁体転移を見出した. この他u(ET)の金属(たとえば,Cr,Mn,Co,Ni,Cu)ハロゲン化物および金属擬ハロゲン化物の塩の合成を行い,多種の単結晶を得て,その伝導度を測定している.次年度には,これらの物質の高周波伝導度を測定し,直流伝導度との比較検討を行う.
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