前年度に続き、ビス(エチレンジチオ)テトラチアフルバレン(ET)を中心とする種々の電子共同体の陽イオン・ラジカル塩を作り、その直流伝導度、赤外〜可視領域の反射スペクトル(数学的変換により伝導度スペクトルに変換する)の測定を行い、EPRによるマイクロ波領域における伝導電子の挙動と対比検討した。また、本研究の途上見出した新しい超伝導体である(ET)_2〔Cu(NCS)_2〕のdcおよびac磁化率を測定し、反射スペクトルの結果と合わせて、その超伝導の機構について、BCS理論との関係で検討を行った。 一方、昨年度製作したマイクロ波空洞を用いた伝導度および誘電率の測定装置に、今年度購入した温度制御装置を組み込み、測定装置として完成させた。装置の検査に、電解合成で作ったα-(ET)_2I_3を用い、その伝導度の温度変化の測定を行い、直流伝導度の測定結果と対比し、装置が正常に運転できることを確認した。現在、上記超伝導体について、4.2Kから30Kにわたって、伝導度、誘電率の測定を行っており、超伝導転移温度前後で詳しい研究を行っている。
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