研究概要 |
研究実施計画に従がい次の実績をあげることができた.すなわち, 1.生体組織のモデルとしてセファデックスゲルを用い,ブルカー社製PCー120型NMRによる緩和時間の測定により存在する水分子の状態を解析した.緩和時間T_1およびT_2のポアサイズ依存性,含水率依存性から水の存在状態に対する周囲マトリックスの密度と運動状態の影響を明かにできた(Magn.Reson,Med.に投稿中).またG25ゲルにおいて特異点があることも明かとなり,DSCの結果との関連を検討している. 2.同上モデル系の緩和時間の温度依存性の実験において,compartmentalzed waterの磁気的挙動に影響する2種類の要因を区別することができた. すなわち,水分子のかたまりの大きさおよびゲルー水相互作用の大きさに依存してどちらかの挙動を示す. このことは生体あるいは食品中の水分子のキャラクタリゼーションをNMRで行う場合,重要なキーとなる事実である. この結果は日本化学会年会(昭和63年4月)で発表すると共に,投稿準備中である. 3.T_1およびT_2の解析ソフトの開発と測定システムの設計:マルチexponentialなT_2解析のソフトが開発され,T_2に10%の差がある場合でも数%の誤差で解析できるようになった. モデル関数系およびセファデックスゲル,デキストラン水溶液系においてデータ解析中である. NMR装置pcー120をパソコンに直結してデータ取得および解析をするシステムを設計し開発中である. 以上,計画の2/3は実行できたが,応用面への展開に多少遅れがみられる. 生体組織への応用として予備的に心筋梗塞状態の組織の解析を始めた. またESRによる水分子の運動性の検討は,一種類のゲルについてデータを得たが,全体像を把握するに至っていない. 次年度の中心課題としたい.
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