研究概要 |
高歪み化合物は,光エネルギー貯蔵の観点からも重要な化合物の一つであり,これら化合物の励起状態の構造と反応性に関する研究は重要な基本的課題の一つである. 本研究においては,これら化合物の励起状態におけるエネルギー緩和過程を吸収・発光スペクトル及びそれらの時間的強度変化の測定より検討し,励起状態の構造とその物理的・化学的挙動を解明することを目的とした. 本年度においては,先ず+1秒オーダーでの吸収・発光スペクトル測定のための高速スペクトル解析装置を組み立てた. 既ち,設備備品として購入したマルチチャネル検出器及びゲート回路を現有している分光器に接続した, この場合の装置の性能は次の通である. (1)時定数は10nsであり,ゲート時間10,20,50,100ns及び遅延時間10ns〜90usでの時間分解スペクトルが精度良く得られる. 尚,ミリ秒オーダーでの測定の場合は,マイクロコンピューターにより制御できる. (2)光電測光法により,従来から得ているスペクトルは波長に対した離散的であるが,今回開発した装置を用いると,波長に対して連続的なスペクトルが得られ,微妙なスペクトル変化を検討することができる. (3)光電測光法では,強い発光が存在する波長領域での吸収スペクトルの測定は不可能であるが,今回はその様な波長領域においても測定できる. (4)りん光強度が非常に弱い化合物の場合でも十分測定でき,検出器の感度補正を行なうことにより補正された発光スペクトルを得ることができる. (5)2,4,6ートリイソプロピルベンゾフェノン類の77.Kにおけるりん光スペクトルの時間的形状変化及び寿命変化を測定した. この結果は,種々の異なった構造を持つ励起状態からの発光によるものと考えられる. (6)室温,サブ+1秒オーダーで吸収スペクトルのシフトを見出し,回転緩和過程についての知見を得た.
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