研究概要 |
本年度の研究においては以下の様な興味ある結果を得た。(1)77K,EPA中における1ーtーブチル及び1,2ージーtーブチルアントラキノン(1ー^tBuAQ及び1,2ー^tBuAQ)のりん光スペクトルは無置換AQのそれと類似した振動構造を持ち、また、寿命も数msであった。一方、1,8ー^tBuAQ,1,2,3ー^tBuAQ及び1,2ー^tBuー3ートリメチルシリルAQ(1,2ー^tBuー3ーTMSAQ)のりん光スペクトルはブロ-ドであり、寿命は数μsと短い。尚、1,5ー^tBuAQのりん光は検出できなかった。(2)上記化合物の77Kにおける過渡吸収スペクトルとその減衰寿命を測定した結果、1,2,3ー^tBuAQ及び1,2ー^tBuー3ーTMSAQではT´←T_1吸収が、1ー^tBuAQ、1,2ー^tBuAQ及び1,8ー^tBuAQでは反応中間体の吸収が観測された。(3)77K、トリフルオロエタノ-ル(TFE)ー水中におけるAQ及びβーハロゲン化AQの異常なりん光スペクトルは三重項AQーTFEー水の錯体形成によって説明できる。(4)同様の結果がベンゾフェノン、1ーインダノンおよびフラボンに関しても得られた。これらの結果は、従来から云われている溶媒との水素結合に基づく長寿命三重項状態の存在を否定するものである。(5)oーベンゾイル安息香酸メチルにおいては2種類の構造の異なる最低励起三重項状態からのりん光と吸収が観測された。(6)メソ置換ブロムアントラセン類(9ーブロム及び9,10ージブロムアントラセン)のT_1及び蛍光量子収率に対する温度効果より、S_1からの直接的な系間交差によるT_1生成過程を見いだした。(7)9ーニトロアントラセン類の光反応においては高励起三重項nπ*状態から反応中間体であるアンスリロキシラジカルが生成することを確認した。
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