研究概要 |
本研究は, ESRの高感度とNMRの高分解能を兼備した電子ー核二重共鳴(ENDOR)の新たな有効性汎用性を示すことを目的として本年度においては核スピンデカップリングENDOR測定システムを製作した. 1.汎用型核スピンデカップリングENDOR空洞共振器の製作:核スピンデカップリングENDORは三重共鳴の一種であるが, デカップリング用の強いRFを照射する第2のRFコイルはENDOR用第一RFコイルに対しても直交するように配置する点で技術的工夫が必要である. 空洞共振器のモードとRFコイルの配置の組み合わせについて,強いRF照射,MW振動磁場とRF磁場との直交性保持,極低温領域での測定および工作段階での機械的強度の点から種々の設計を検討し,予備的部分試作を行った. アモルファス系,溶液系にも適用できる汎用型Xバンド空洞共振器としては,当初予定していた最普及型TEO11円筒型空洞共振器に代えてTMモード共振器を採用し,設計及び材料の検討を終了して現在製作中である. このXバンド共振器は液体ヘリウム温度領域でのENDOR測定用の石英二重管の挿入が可能となる大口径開放部を上下にもつタイプである. 極低温下での測定はフレキシブル液体ヘリウム移送管と小容量液体ヘリウム溜めから空洞共振器内試料部へ直接的にヘリウムガスを強制的に流すフロー式を採用した. 省液体ヘリウム型のクライオスタット用空洞共振器としてXバンド矩形型TE102モードを採用した. 液体ヘリウム用デュワー内径(磁極空隙65mm)の制限から,他モードの選択の余地はほとんどなかった. 省液体ヘリウムタイプは液体ヘリウム中へ空洞共振器を沈めるディピングスタイルで試料部の極低温を維持するので,外部室温部からマイクロ波のカップリングを効率よく調整できる共振器を製作中である. 2.検出測定系のSetーup:フロー式測定用の可動型排気装置と共にSetーupはほぼ完了した.
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