研究概要 |
新規環構築法として1)鎖状化合物の新規環化反応及び2)環状化合物の環拡大反応を開発し、これらの有用性を明らかにした。また、その応用として、生理活性天然有機化合物の環炭素骨格の構築にこれらの手法がきわめて有効であることを示した。 すなわち、(1)シロキシシクロプロパンから得られる各種の金属ホモエノラートを利用する選択的炭素ー炭素結合生成反応について検討を加え、エステルのβー炭素上にαーヒドロキシアルキル基、αーケトアルキル基、ビニル基等の導入法を確立した。この手法を活用して、ステロイド炭素骨格の簡便な構築法を開発し、その応用として、副腎皮質ホルモンとして重要なコルチゾンの短段階全合成を行い、併せて側鎖の有効且つ簡便な導入法を確立した。 また、特徴的な環炭素骨格に加えて、極めて重要な生理活性を示すことで注目されているタキサンジテルペノイドの合成について検討する目的で、前駆体として4,5ー2置換3ー(シリルメチル)シクロヘキセノン及びそのエノール異性体の位置選択合成法を確立した。さらに、この前駆体を用いて、タキサンのB環の直接環化反応を検討し、ルイス酸の存在下で環化反応が高収率で進行することを明らかにした。 一方、(2)シリルメチル基の陽イオン安定化効果を活用して、1ー(シリルメチル)シクロアルカンカルバルデヒド及びその誘導体から中間に各種の炭素陽イオンを生成させ、これらの転位反応について検討した。その結果、環炭素が選択的に転位し、対応する一炭素環拡大生成物が高率で得られることを明らかにした。また、非対称置換化合物を出発物質として用いた場合、転位はSP^2-炭素及び多置換SP^3-炭素が位置及び立体特異的に転位することが分かった。
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