研究概要 |
海藻類の発生・分化・生長などの基本的な過程は陸上植物とは著しく異なっているが, これらの過程を支配している活性物質の研究は殆んどなされていなかった. 代表的な褐藻オキナワモズクは生活史のうち微小な枝状体世代において周囲に他感作用を示す物質を放出し, 他の海藻類の遊走子および胞子の活動を低下させることが考えられていた. このような作用をもつ活性物質を純粋に単離するために最初に生物検定法の確立を試みた. 多くの海藻類は一年間に一回しか胞子とか遊走子を放出しないため天然の海藻を被検体とすることは実行を進める上で著しく不利である. このため実験室で常時藻類の生活史の各段階を制御することのできるスサビノリを被検体に選んだ. 最初, オキナワモズクの盤状体を保存しておいた海水について活性物質の検出を試みたが検出することは出来なかった. ついでこの褐藻の成熟葉状体のメタノール抽出物について試験したところ, スサビノリの生活史のうちコンコセリス胞子に作用し, 放出された胞子が海水中を遊泳し着床するまでの間に死滅させることが明らかになった. 活性物質の純度(活性度)を定量的に明らかにするために着床した胞子を計測する方法を確立した. しかしこの方法ではなお検定に2週間近くの日数を要し単離・精製に日数を要すという不利の点があった. ついでスサビノリの胞子と近緑のプランクトン・ヘテロシグマに対しても同様な作用を示することが明らかになり容易に(数時間以内)検定する方法が確立され, 活性物質を純粋に単離することが出来た.
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