研究概要 |
藍藻の一種であるMicrocystis viridisから著者らは毒性を示す物質cyanoviridin RRを単離したが、この物質は7個のアミノ酸からなるペプタイドであり、そのアミノ酸の一つは3-amino-9-methoxy-2,6,8,-trimethyl-10-phenyldeca-4,6-dienoic acidであった。このアミノ酸の2-および3-位の立体配置は明らかになっているが、8-および9-位のキラリティ-は不明であった。本年度は合成によってこの立体配置を決定するための実験を行った。 絶対配置のRであるmethyul3-hydroxy-2-methylpropionateをハイドライド試薬で還元して相当するアルコ-ルに変えたのち、酸化してRアルデヒドとした。S-型のアルデヒドもアルコ-ルの保護基の変換によって調製した。R-アルデヒドを臭化ベンジルから作ったグリニヤ-ル試薬と反応させ二種のジアステレオマ-を1:6の比で得た。それらの立体配置はNMRスペクトルの解析によって決定したところ、主生成物はβ-アルコキシレ-ト制御によって生成した立体配置を有していた。S-アルデヒドからも同様にして光学活性のジアステレオマ-2種を得た。これら4種の立体異性体をそれぞれメチル化してメトキシアルコ-ルとしたのち、ウレタン誘導体にした。これとは別にCyanoviridin RRをオゾン分解したのち、ハイドライド試薬で還元し、ついでフェニルイソシアナ-トによってウレタンとした。このようにして得られた天然のウレタンは8-S,9-Sの合成品と一致したのでこれによりアミノ酸の立体配置が決定した。
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