熱蛍光の青と赤色発光の原因追求を二つの方法を用いて行なった。その一つは中性子放射化分析であり、他方はゾルゲル法を用いた合成石英ガラスを使用した実験である。前者に関し約30種に及ぶ天然石英試料を分析し、約20種におよぶ元素について定量し、赤色発光成分への相関性を調べた。その結果典型元素や遷移金属元素に関しては有意の関係は認められず、希土元素について、特にEuとSmに関して明瞭な相関性が認められた。そこで分析可能な希土類に関して調べるため、放射化学分析を伴なう放射化学分析法を適用した。その結果を用いて、いわゆる隕石規格化希土類パターンを作製したところ、赤色発光の石英は、Euが正の異常値が異常値を示さないものが大部分であり、青色発光石英は、Euが負の異常値を持つことが普遍的であることが分かった。このことと、Eu対Sm値のプロット図から、赤色石英群では、Euが酸化状態の高い値で存在しており、Eu(IV)であることが示唆された。ゾルゲル法を用いた合成石英ガラスを用いてこれらの事実を実験的に確証しようとした。ESRの結果などに基づき、不純物元素としてAlをドープした石英ガラスからは、青色発光が認められ、Alが青色発光の主たる原因と確認出来た。しかしながら赤色発光については、Euをドープした石英ガラスからは、赤色発光は認められるものの、スヘクトル測定結果からは、天然石英では620nmに巾広い単一ピークを示しており、合成Eu混入ガラスからは、シャープな線スペクトルを示しており、相互に一致は見られなかった。そこで、今回の研究費で購入のPMA(多重分光器)で、天然石英不純物のみ抽出しこれを合成ガラスにドープした試料について、熱蛍光スペクトル測定した。その結果、合成石英からはいずれも長波長側に希土類由来と思われる3本のピークが示され、興味深い現象が得られた。また熱蛍光年代測定法を実際に適用し、地質学的に合理的な年代結果を得た。
|