昨年度本研究費で整備したγ線測定器を用いて、昭和61年夏に四国に落下した国分寺隕石中に宇宙線により生成した比較的長寿の放射性核種の測定を続行した。そしてγ線測定器整備以前に測定したデータから得られた結果、この隕石は宇宙空間に存在していた間は直径25cm、重量200kg以上もある大きな物体であったが、地球大気に突入し、大気中を進む間に大気に向かってきた全面はその衝突の衝撃、摩擦熱の為に消散してしまい、背面の一部約10kgのみが地表に到達したのではないか。従ってこのことから、たとえ宇宙空間に存在している間に表面近くに存在していたと考えられる隕石を我々が手にいれても、この隕石がもともと小さかったとか、この隕石は空気による摩擦を受けなかったと推論するのは早計であるという推論の確証を行っている。この確証の為の方法としては、放射能測定以外に、この隕石中に宇宙線で生成された希ガスの測定を西ドイツマックスプランク研究所に以来して行った。また希ガス以外の宇宙線生成安定核種の測定も行い始めている。 宇宙線生成放射性核種が壊変してできた安定核種を測定する為に、本年度は特に本館に設置されている質量分析計の整備を行った、本館に設置されている質量分析計は、本来有機試料用に設計されていたものを改造した非常に小型の機器である。これまではどちらかというと古典的な方法でデータをとっていたが、今回市販のパーソナルコンピューターの中に、質量分析計の磁気走査を自動的に制御できるようなインターフェイスを作って挿入し、ピークジャンピングにより測定できるようにした。また同時に、得られたデータも自動的に計算処理できるようなプログラムを作製した。この為、0.1%程度の精度で同位体比を測定できるよになった。現在これらの新設付加装置のテストが終っていよいよ本格的に宇宙線生成核種の測定を始めようとしているところである。
|