金属イオンの溶媒交換反応や錯形成反応の機構を解明するため、以下のような反応系に関して圧力効果を測定し、種々の知見を得た。特に配位構造や分子のかさ高さ(溶媒や配位子)と反応機構の関連を解明した。 1.Ni^<2+>およびCu^<2+>のエチレンジアミン交換反応 高圧^<14>NーNMRを測定し、二座配位子として働くエチレンジアミンの動的挙動を明らかにした。活性化体積はNi^<2+>もCu^<2+>もともに正(13と4.0cm^3mol^<-1>)であることから解離的機構で交換が起っている。 2.ニトリル中のニッケル(II)イオンの溶媒交換反応の活性化体積 モル体積が大きく異なる(53から105cm^3mol^<-1>)六種のニトリル中でのNi^<2+>の溶媒交換反応の活性化体積(△V^≠)を測定した。どのニトリル中でもΔV^≠=^^〜13cm^3mol^<-1>であることから、この系では活性化体積と溶媒のモル体積は無関係であることを示している。 3.結合配位子の溶媒交換反応への影響 Fe(III)ーPhDTA錯体は1個の溶媒分子を配位する7配位錯体であることを結晶構造解析から明らかにした。^<17>OーNMRを用いて水およびDMFの交換反応速度を測定し、PhDTAによって著しく置換活性化され、機構は解離的になることを解明した。 4.四面体型ベリリウム(II)イオンの錯形成反応をDMFおよびかさ高いTMU中で研究した。活性化体積はDMF中で負であるのに対して、TMU中では正の値となり、溶媒がかさ高くなると反応機構は解離的になることを実証した。 5.平面構造をもつホウ酸の錯形成反応を研究し、平面構造から四面体構造へ変化するときの遷移状態に関して多くの知見を得た。 以上のように計画通り研究を遂行することができた。
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