研究概要 |
主として不完全キュバン型硫黄架橋モリブデンおよびタングステンクラスタ-錯体を合成し構造決定および物性測定を行なった。クラスタ-合成の原料として使用する単核モリブデン(III)錯体、複核モリブデン(V)錯体、および複核タングステン(V)錯体の合成に関しても新しい知見を得ることが出来た。また、キュバン型(混合金属)錯体に関する諸物性の測定も行なった。 1)MoW_2S_4およびMo_2WS_4骨格をもつ不完全キュバン型モリブデン-タングステン混合金属錯体を合成しX線構造解析とともに物性(吸収スペクトル、電気化学、XPS)の測定を行ない。Mo_2S_4およびW_3S_4骨格をもつ錯体の物性と比較した。2)単核モリブデン(III)錯体、(NH_4)_3[MoCl_6]、の簡易合成法を開発するとともにX線構造解析を行なった。3)複核モリブデン(V)錯体、Na_2[Mo_2O_2(cys)_2]・5H_2OおよびNa_2[Mo_2O_2S_2ー(edta)]・2H_2Oの簡易合成法を開発した。4)以前報告した複核タングステン(V)システイン錯体の合成法を改良するとともに、対応するエチレンジアミン四酢酸錯体、NaNH_4[W_2O_2S_2(edta)]・2H_2O、の合成およびX線構造決定を行なった。5)キュバン型混合金属Mo_3MS_4骨格をもつアクア錯体に関して、磁化率の測定(M=Fe,Ni)により金属間相互作用の大きさを見積るとともに、メスバウア-効果の測定(M=Fe)を行ない、鉄の酸化状態を検討した。6)キュバン型モリブデン錯体[Mo_4S_4(edta)_2]^<3->のFe(aq)^<3+>、VO_2^+およびキノンによる酸化反応について速度定数および活性化パラメ-タ-を得た。 なお、Mo_3S_4(aq)^<4+>およびW_3S_4(aq)^<4+>と2価のスズイオンとの反応については最終的な結果を得ておらず、さらに検討中である。
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