研究概要 |
北日本新第三系の珪質岩約100試料についてX線粉末回析による構成鉱物の同定と半定量, 螢光X線分析による主要および少量元素, LECOーWRー12E装置による機炭素および炭酸塩炭素の定量, 乾燥かさ比重の測定, そして切断面および鏡下での堆積構造の観察を行った. また, そのうち35試料について放射化分析により微量元素および希土類元素の定量を行った. その結果, 現在迄に以下の事が明らかになった. (1)分析した珪質岩中の生物源シリカ量は化学分析値より7〜83%と推定される. 特に中期中新世の珪質岩では平均50%前後と高い. (2)珪質岩中の有機炭素量は0.3〜3.6%で, 生物源シリカ量と正の相関(γ=0.55)を示す. また, 貧酸素状態で堆積したものほど有機炭素量が多い傾向が顕著である. (3)炭酸塩炭素量は0〜4.5%であるが, 0.1%を越す試料は全体の20%以下で, それらはほとんどの場合続成作用で形成されたものである. 一般には生物起源の炭酸塩鉱物は非常に少ない. (4)有機炭素と正の相関を示すものとしてSi,Ba,Ni,Cu,Znがある. このうちSiおよびBaは生物源シリカに伴うと思われる. 一方, Ni,Cu,Znは有機物に伴う可能性が高いが, その存在状態については有機物に吸着されているのか有機物の分解に伴って生成した褐鉄鉱などの自生鉱物中に取り込まれているのか現在の所明らかでない. これは今後解決すべき問題である. (5)希土類元素(La,Ce,Sm,Eu,Tb,Yb,Lu)の総量は18〜126ppmと平均的頁岩よりやや低く, 生物源シリカ量と負の相関をもつ. これは生物源シリカには希土類元素が余り含まれない事による希釈効果も考えられる. また, 砕屑物が細粒である程希土類元素の総量が大きい傾向がある. (6)希土類元素相互の相対比は, 地域, 時代, 生物源シリカの量などによらず比較的一定している. そしてその相対比は平均的頁岩における相対比と類似する.
|