研究概要 |
化石硬組織,海底堆積物および火山噴出物中に見られる^<230>Th・^<238>U(或は^<234>U)間の放射非平衡関係から信頼性の高い地質年代を求め,過去20万年間の地殻変動量や海底の環境変遷を論ずることを目指し,(1)一般には極めて少量しか含まれない天然試料中のウランおよびトリウム同位体組成を出来るだけ正確に求めるたる,従来使用していたものより効率・精度をさらに向上できるα線測定システムを完成させた.それによって,(2)沖縄県北大東島産の11個の化石サンゴから^<230>Th/^<234>U年代を得,同島の最終間氷期における海水準到達高度が,少なくとも6.5m以上であることが確証された.(3)ニュージーランド北東における後期更新統中の最重要示標テフラの一つであるロトエフ火山灰の噴出年代せ^<238>Uー^<230>Thアイソクロン法によって求め,71,000±6,000年の結果を得た.(4)同方法によって,本邦第四系の編年にとって重要な火山噴出物6試料(九重火山起源の飯田火砕流と山川凝灰角礫岩,阿蘇4火砕流,御岳第一軽石,立山D軽石および大山倉吉軽石)の形成年代(それぞれ,35±8,218±26,80±2,82±5および43±8ka)を求めた,(5)従来Uーpd年代値の信頼性チェックなどに利用されていたコンコーディア(concordia;年代二致曲線)をウラン系列年代測定法に導入することを試み,喜界島産化石サンゴのうち,^<230>Th/^<234>U・^<231>Pa/^<235>U両年代が一致しない5試料が,実は230,000+50,000-30,000年前に死亡し,それらが今から4,000±4,000年前に,一度ウラン・トリウムおよびプロトアクチニウム同位体に関して開放系となった可能性があること,そして,このことから,波照間島同様,本島上にも,おおよそ21万年前の温暖期(penultimate interglacial)に形成されたサンゴ礁性石灰岩が存在することが推論できた.本年度中に得られた新知見は以上の通りである.
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