キンバーライトマグマの成因について、実験岩石学的方法により研究した。同時に北米に産出するいくつかのキンバーライトについて、岩石学的、地球化学的研究を行った。これらの研究から得られた知見、成果は次の様なものである。 1.キンバーライトマグマの化学組成に近似される無斑晶質キンバーライトの高温高圧下の相平衡を決定した。40Kb以下では、液はかんらん石、単斜キ石、スピネル、方解石と平衡で、ガーネットや斜方キ石などの上部マントル物質を構成している主要鉱物は出現しない。低圧ではモンチセライトが出現する。方解石はキンバーライトの主要鉱物であり、方解石を含む交代作用を受けた上部マントルの部分融解でキンバーライトマグマが生成した可能性がある。 2.上部マントル起源の捕獲岩中から高いBaOを含む金雲母が発見された。BaOは4.2%に達する。化学組成と組織の特徴からこの金雲母は上部マントルにおけるBa、アルカリ元素に富んだフルイドによる交代作用で生成したと考えられる。マントル起源の金雲母中のBa/K比は、大陸に出現するアルカリに富んだ火山岩類中のBa/K比とほぼ等しく、上部マントルでは、金雲母がBaやKなどの元素を含む主要鉱物であると考えられる。 3.北米のいくつかのキンバーライトの化学組成と炭素と酸素の安定同位体比を検討した。炭素同位体比から、これらキンバーライト中の高いCO_2は上部マントル起源であることが明らかになった。キンバーライトの鉱物学的特徴は多様であり、マグマの結晶作用が異なった深度で起こる事により、多様な岩石が出現すると思われる。マグマは上部マントルの150km以深の部分融解により発生し、マントル起源物質は、K、Rb、Baなどイオン半径の大きな元素が濃集し、同時に方解石、金雲母を含む、交代作用によって生成した特異な物質であると考えられる。
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