交付申請書に記載した研究計画に基づき、塩化物フラックス中における3価のチタンイオンの還元過程を明らかにするため、下記の2種類の実験を行った。(i)サイクリックボルタメトリー:TiCl_3を含む16.4mol%BaCl_2ー46.9mol%CaCl_2ー36.7mol%NaClをパイレックスルツボに入れてアルゴン気流中で溶解し、500、550および600℃の温度で、陽極に炭素棒、陰極にタンタル線、参照極にAgー1%AgCl電極を用いて、タンタル線をカソーディックに分極した時のサイクリックボルタメトリーを求めた。その結果、3価のチタンイオンは2段にわたって還元されることがわかった。(ii)3価のチタンイオンの金属チタンにより還元:種々の量のTiCl_3を含む上記モル比のBaCl_2ーCaCl_2ーNaClをパイレックスルツボに入れて550℃、アルゴン気流中で溶解した。重量既知のチタン板を浸漬し、一定回転速度のインペラーで溶融フラックスを攪拌しながら、pt電極とAgー1%AgCl参照電極を用いて、フラックス中の酸化還元電位の経時変化を測定するとともに、Ti板の重量減少量を求めた。フラックス中に、3価と2価のチタンイオンのみが存在する場合と3価と1価のチタンイオンのみが存在する場合について、酸化還元電位の変化量とチタン板の重量減少量の関係を表わす理論式を求め、実験値と比較検討した。この結果と、昨年度行った3価のチタンイオンのMgーZn合金による還元実験の結果から、塩化物フラックス中では、3価のチタンイオンは2価を経由して金属チタンに還元されることが明らかになった。既存の熱力学データを用いて作成したTiーCl系化学ポテンシャル状態図も上記の結論を支持した。
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