研究概要 |
昭和62年度研究実施計画にしたがって,合金電析の際の各成分金属の部分分極曲線をそれぞれの単独析出の際の部分分極曲線と比較した. その結果,変則型共析であるZnー鉄族金属系においては,Znの部分分極曲線には鉄族金属の共析により大きな変化は認められなかったものの,鉄族金属の析出電位はZnイオンの存在によりZnの析出新位付近まで分極した. このとき得られる合金は浴組成に比較してZnを極めて多く含有しており,したがってZnの共析による鉄族金属の析出が大きく抑制されたことが変則型共析と引き起こしていることがわかった. さらに,誘導型合金電着(Moー鉄族金属系,Reー鉄族金属系)においては,同時放電により単独では析出しがたいMo,Re析出の部分分極曲線だけではなく鉄族金属のそれも大きく復極する現象が認められた. しかしながら,Mo,Reが最も効率良く電析できる合金の組成は各合金系で極めて限られており,これ以上MoあるいはReを多く含有するように電解条件を変更するとこれらの酸化物の混在が認められた. 以上述べた合金電着においては,その共析機構に中間生成物としてZn水酸化物(変則型共析)あるいはMo,Reの酸化物(誘導型共折)が密接に関与していることが考えられる. そこで,次に示差熱天秤とX線回折を併用して,これら酸化物の構造を決定した. その結果,変則型共析におけるZn水酸化物はその生成量が微量なためかその存在を確認することはできなかったが,Mo一鉄族金属系においては一部6価を含んだ4価Moの無定形の含水酸化物であり,これは昇温によるMoO_2,Na_2Mo_3O_<6.5>およびNa_2MoO_4へ結晶化すると考えられた. 一方,Reー鉄族金属系において得られるRe酸化物は析出したままの状態ではやはり無定形であり,これを昇温により結晶化させた結果,比較的貴な電位で得られる酸化物は4価と6価Reの混在したものであったが,電位が卑になるにつれRe_2に近づいた.
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