レーザー光束を二分し再び交差させて作製した干渉パターンは、その生成した領域において、物質と光との相互作用により、物質の光学的性質(屈折率 吸光係数)等が、光の干渉パターンと同型の変調を受け、一種の回折格子として機能する。 パルスレーザー光を交差させると、光吸収に引き続く無放射緩和過程を通して発生する熱によって、屈折率や温度依存に基づく回折格子(レーザー誘起回折格子 LIGと略す)や、瞬間的かつ局所的な熱膨張に基づく超音波の発生と消滅がみられる(レーザー誘起超音波、我々はコヒーレント超音波と称する)。 これらは光の干渉パターンにより定まる特定の格子間隔を持つ回折格子として機能し、ブラッグ条件を満足する方向から入射するプローブ光の回折効果を用いて検出できる。本研究は、これらレーザー誘起超音波やLIGを用いて新しい化学計測法を開発するこを目的とした。 これは、近年進展の著しい新素材・新機能性材料の開発研究に不可欠なそれら材料の非破壊評価技術・プロセスモニタリング技術の開発といった重要課題と目的を合致させるものであり、緊急課題であった。本研究課題のレーザー誘起超音波の各種化学計測への応用のための種々の基礎的研究は、上記目的に対してほぼ完成したと考えられる。本法は、最終的には従来の計測法では困難もしくは不可能である、(I)プラズマ密度・温度・音速・組成などの局所的および時間的変化を、非接触遠隔的に得る、(II)高温高真空中等の極限状態に置ける薄膜の製作過程において、in-situに膜物性(厚さ、弾性率 熱拡散率等)をモニタリングする、といった実際目的に適用されて評価されるべきであるが、ここまでにその可能性を示唆する基礎的知見を得た。今後はより実用化を目指して研究計画を進行する予定である。
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