本年度は、高いスパッタリング率をもつ二酸化テルルをスパッタした場合におけるイオン性のスパッタ粒子の形状を、スパッタリング装置に付設した四重極質量分析計を用いて調べ、さらに、これらのスパッタ粒子の形状および濃度が、スパッタリングガス中の酸素量を変化させることによってどのように変化するかを調べ、スパッタリングにおけるスパッタ粒子の形成過程について考察した。 ターゲットには加圧成形した二酸化テルル板を用いた。二酸化テルルをスパッタした場合に観測された質量数は主に、32、40、80、130、146、162であった。これらの質量スペクトルの位置からイオン性の粒子は、0_2^+、Ar^+、Ar_2^+、Te^+、TeO^+、TeO_2^+であると考えられる。このことから、TeO_2をスパッタした場合のイオン性スパッタ粒子は、主に、Te^+、TeO^+、TeO_2^+であることが合かった。次に、スパッタリンガス中の酸素含有量を0%から100%まで変化させることによって、これらのスパッタ粒子の酸素分圧依存性を調べた。その結果、Te^+、TeO^+TeO_2^+の質量スペクトルの強度の和の酸素分圧依存性は、スパッタリング速度の酸素分圧依存性とよい対応を示した。また、Te^+、TeO^+、TeO_2^+のスペクトルの強度の和に対する各々のスペクトルの強度の比の酸素分圧依存性を調べた結果、酸素分圧が増加するにつれてTe^+の割合は減少し、TeO^+とTeO_2^+は逆に増大した。この結果をもとに、TeO^+粒子はTe^+とO_2粒子との反応により、TeO_2^+粒子は、Te^+粒子あるいはTeO^+とO_2粒子との反応により生成することを明らかにした。また、スパッタ粒子から考えられる膜の組成と実際に得られた膜の組成の比較から、スパッタ粒子は、酸素とおもに基板上で反応して膜を形成することが分かった。
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