研究概要 |
本研究の目的は機能性ハライドガラスと金属ガラスにおいてガラス中でのFeおよびSnについて液体窒素温度からガラス転移温度の温度範囲でメスバウアー分光を行うことによりFeおよびSnの存在状態, その近傍の化学結合状態, ガラスの格子力学などについて知見を得ることである. 本年度は予算の関係上, メスバウアー分光器本体のみの購入になり, 低温測定のためのクライオスタットは次年度の購入になる. それゆえ, 本年は室温測定のみで解析が可能な対象について研究を行った. 研究対象の一つはフッ化物イオン高伝導性ハライドガラスFeF.ナ_<3.ニ>ーPbF.ナ_<2.ニ>ーMnF.ナ_<2.ニ>における鉄の化学状態の検討である. もう一つは遠赤外透過性ハライドガラスFeCl.ナ_<2.ニ>ーKClーZnCl.ナ_<2.ニ>における鉄の化学状態の検討である. FeF.ナ_<3.ニ>ーPbF.ナ_<2.ニ>ーMnF.ナ_<2.ニ>系ではFeF.ナ_<3.ニ>含有量が20から80モル%にわたってガラス化が可能である. メスバウアー分光にて鉄の化学状態を解析したところ, 鉄イオンは高スピン型の2価と3価の酸化状態で存在し, 鉄イオンのうち10〜20%が2価イオンであることがわかった. また2価と3価のイオンともF.ナD212.ニD2より八面体6配位されていることがわかった. このガラスでは数%の電子伝導があることが輸率測定から明らかになっているが, 本研究での鉄の存在状態の解析からその妥当性が裏づけられた. FeCl.ナ_<2.ニ>ーKClーZnCl.ナ_<2.ニ>ガラスについては, 予備的研究としてガラス作製条件(FeCl.ナ_<2.ニ>試薬, 水の混入量, 溶融雰囲気など)による鉄の存在状態の変化について解析を行った. その結果, 2価の鉄を出発試薬とし, 不活性雰囲気で溶融したにもかかわらず, 多くの鉄は塩素6配位の3価の状態で存在すること, 一方, 2価の鉄も6配位環境にあるが, ガラス中に含まれている水も2価鉄の配位種になっていることなどが明らかになった.
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