今年度は62、63年度までに得られた結果をもとにして、NaYゼオライト細孔内に合成したRh_3(CO)_<16>、1r_6(CO)_<16>、Rh_<6ー×>lr_×(CO)_<16>などのカルボニクラスタ-の構造解析をさらに詳細に進めた。また、これを前駆体にした触媒上でアルカンの水素化分解分反応やベンゼン水素化反応を行い、細孔内活性サイトの構成原子が触媒反応に及ぼす多中心共同効果についてアンサンブル効果・リガンド効果の観点から検討した。すなわち、Rhイオン、lrイオン、混合Rh+lrイオン系でイオン交換したNaYゼオライトの還元的カルボニル化反応により、それぞれRh_6(CO)_<16>、lr_6(CO)_<16>、Rh_<6ー×>lr_×(CO)_<16>(×=1ー5)を合成し、その構造をFTIR、EXAFS、^<129X>e NMRで調べた。その結果、以上のカルボニラスタ-が細孔内に均一に分散し捕促されていることがわかった。さらに今回新たに、NaY内で副生するRh(CO)_2が気相の ^<13CO>と室温で速やかに交換反応を起こすこと、Rh_6(CO)_<16>での交換反応の速度は遅いこと、Rh_6(CO)_<16>は気相中の ^<13CO>と交換を起こすのではなくRh( ^<13CO>)_2との二分子間反応により ^<12CO>と ^<13CO>を交換することがわかった。 Rh_6(CO)_<16>、lr_6(CO)_<16>、 Rh_4lr_2(CO)_<16>などのカルボニルクラスタ-を水素還元して調製した触媒上でnーブタンの水素化分解反応を行うと、反応活性がlr原子のRhクラスタ-希釈により顕著に減少するアンサンブル効果が観測された。このようなアンサンブル効果はエタン水素化分解反応でみられた。nーブタン水素化分解反応における生成物選択率をみると、Rhlrクラスタ-触媒では、中央CーC結合切断の選断率が高くなりエタン生成が増大することがわかった。他方ベンゼン水素化反応はクラスタ-構造に対して構造不敏感であった。以上のように、今年度はそれまでに光好な結果を示したものにつきトレ-サ-実験などで動的反応解析を行い触媒系の最適化を図った。また3年間の研究を総括し、今後の触媒設計のための指針を得た。
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